スペインとの出会い

1980年代後半から90年代初頭にかけてはイギリスと日本を行ったり来たりの生活でした。

イギリス滞在中は大学敷地内にある少人数でキッチンやバスルームを共有するタイプの寮に住んでいました。できるだけ自炊していましたが、試験とかレポートとか忙しくなってくると時間に余裕がなくなり、学食を利用する機会が多くなるのですが、ご存知の通り食にはあまり恵まれていないイギリスの、さらに学食となると、その水準は推して知るべし、日が経つにつれ心がドンドン挫けてくるレベルでした。

そんな心を奮い立たせるために、時々は4,5人で車を調達し、フェリーでベルギーへ渡り、ブルージュなどで普通じゃなく山盛りのムール貝やごく普通に美味しいジャガイモの付け合せを食べては、イギリスに戻ってはまた頑張る日々でした。

景色も寂しい冬が明けて、芝生の雪溜まりがスノードロップスの花の群れに変わる頃、一週間ほど余裕ができて寮の友達に誘われるままスペインへ行く事になり、私が往復の航空券を負担、滞在中の食住を友達がもつことになりました。

まず友だちの家に寄り、お母さんの手料理をごちそうになったところ、なぜか懐かしい味がして、すっかりスペイン料理のファンになりました、というよりイギリスの学食に比べたら、何でも美味しかったに違いないのですが。

友だちのお姉さんやお父さんが毎日連れて行ってくれたバルではおつまみが美味しくて、アルコールに弱い私でも十分馴染みになれたのは生まれてはじめての体験でした。

スペインと出会ったというより、スペインで美味しいものに出会ったのが、その後年に一度はスペインを訪れる生活になるきっかけでした。

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