お世話になった友人のお母様を偲んで


亡くなった友人のお母様は背の高い大柄な美人でした。女王様然とした佇まいで、こちらはついつい小間使いのように仕えてしまう方でした。
日本へいらした時買い物にお付き合いしました。可愛い息子に美味しいものを食べさせたい一心で、ピストの材料を買い出しに出かけました。ピストはラタトゥイユのスペイン版です。
当時はまだズッキーニが一般的ではなく、出かけた先の西友では見つかりませんでした。売り場を走り回って探した結果を報告しましたが、カラバシン(ズッキーニ)を売っていないなど信じられない彼女は近くで陳列作業をしていたスタッフを捕まえ、噛んで含めるように言い聞かせました。
「カ・ラ・バ・シーン」
スタッフは訳がわからず固まっていましたので、彼女は再度繰り返しました。
「カ・ラ・バ・シーン! 」
小柄な男性スタッフに覆い被さる勢いの威風堂々とした彼女の姿が今も目に浮かびます。
もちろんその後紀ノ国屋まで走って調達して参りました。

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